大学院法学研究院 准教授
大賀 哲

国際協力入門

2015.05.25

kokusaikyouryoku昨年度に引き続き、基幹教育の集中講義で「国際協力入門」を担当しています。国際協力や援助についての問題(とくに政治的な問題)を。ケーススタディを通じて学んでいます。受講生は全員1年生なので、視点がとても斬新です!いままでに2回授業をしました。

1回目の授業のテーマは、先進国の私たちが「援助」 することが本当に途上国のひとたちのためになっているのか?「 援助」をする先進国の私たちと、「援助される」 途上国の人たちの関係というのがひとつのキーワードになっていました。ややメタな視点で言えば、援助をすることが、支配と依存という関係を作り出しているのではないか。援助を通じて、先進国と途上国という南北格差がより強化されてしまうのではないかという問題です。これについては沢山の人たちが沢山のことを論じていますが、読みやすいものとしては、村井吉敬『エビと日本人』岩波新書鶴見良行『バナナと日本人』岩波新書鶴見良行『東南アジアを知る』岩波新書などがあります。いずれも新書なので読みやすいです。

また、2回目の授業では、「援助する側」と「援助される側」のニーズの違い、ニーズの衝突がひとつのテーマでした。これは1回目の先進国と途上国の関係性ということともつながっているテーマですが、ここには、①先進国の援助は本当に途上国のニーズに合っているのか?(途上国のための援助になっているのか?)、②途上国のニーズに応えることが本当に援助になるのか?(ニーズに応えるだけで良いのか?)という二つの問題があります。つまり、先進国が効率的・効果的だと考える援助を行うべきなのか?それとももっと途上国のニーズに応えるべきなのかという問題です。この問題を掘り下げていくためには、ニーズの対立、ニーズの衝突という課題を克服(あるいは調整)しなければなりません。この問題を考える上では、鷲見一夫『ODA援助の現実』岩波新書鷲見一夫『きらわれる援助―世銀・日本の援助とナルマダ・ダム』築地書館ウィリアム・イースタリー 『傲慢な援助』東洋経済新報社などが参考になるのではないかと思います。

いずれにせよ、国際協力は何を目指した活動なのか?援助をすることでどのような問題が生じ、それをどのように改善していかなければならないのかということを、まずは先進国と途上国という関係性からじっくりと考えてみると良いと思います。


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