大学院法学研究院 准教授
大賀 哲

ミルトン・フリードマン(村井章子訳)『資本主義と自由』(日経BP社、2008年)

2015.05.21

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

久しぶりに本の紹介です。本書の初版は1962年。文体は平易でとても読み易いです。著者のミルトン・フリードマン(1912-2006)はマネタリズムを主唱したアメリカの経済学者で、新自由主義(ネオリベラリズム)やリバタリアンの議論の文脈でその代表的論者のひとりとして参照されます。

フリードマンは個々人の自由を保障するのが政府の役割であり、政府自身は決してプレイヤーになってはならないと説きます。政府はなるべく政策介入しない方が良いのです。たとえば本書には、家賃規制、最低賃金、ラジオ・テレビ規制、社会保障制度、職業の免許制度、住宅、郵便、有料道路などが「政府が行うべきではない政策」として論じられています。フリードマンは個人の利益に関わるような領域は政府や公的サービスが介入すべきではなく、民営化して自発的な市場原理に委ねれば良いと考えます。他方で、治安の問題(警察や消防など)はフリーライダーの問題が生じるため、政府が介入する必要があるとも説きます。また犯罪や不正の撲滅、貧困状況の改善など公共善を必ずしも否定しないのも彼の特徴です。

個々の政策判断やその評価という意味では現代的な示唆も多く、とても50年以上前に書かれた本とは思えないほどです。アメリカにおけるリベラリズムとは何か?それはどのような思想体系であるのか?ということを理解する上ではとても良い入門書と言えそうです。

 


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