大学院法学研究院 准教授
大賀 哲

ワークショップと社会連携活動の意味

2015.05.27

世界一大きな授業 以前にこのブログでも告知をさせていただいた「世界一大きな授業」ですが、第1回目が先週の日曜日に無事終了しました。早速、西日本新聞と朝日新聞で取り上げていただきました。「世界一大きな授業」は今週の土日、東箱崎公民で行う出前講座と九州大学で行う公開講座とあと2回残っていますが、ちょうど良い機会なので、大学の教員がこうした社会連携活動を行うことの意味を改めて考えてみたいと思います。

現在、私が進めている教育関連のプロジェクトは3つあります。①e-learningを用いた授業実践、②東区コミュニティ・ユース事業による「貿易ゲーム」、③そしてこの「世界一大きな授業」です。以下、簡単に説明しますと、次のようになります。

①九大ではBlackboardというe-learningシステムを入れていますが、Blackboardを用いた授業改善の内容(具体的には配布資料の配信やレポート添削、その他授業を双方向のものとするための工夫)を検討し、それを社会科学、それも政治学の学修要請に見合ったものに合わせてカスタマイズしていくというのがこのプロジェクトのねらいです。①についてはすでに学内の研修会とBlackboardのカンファレンスで1回ずつ成果報告を行い、今年の7月にも大阪大学で事例報告をする予定です。そろそろこれらをまとめて論文を書きたいと思っています。

②2013年から東区のコミュニティ・ユース事業として、箱崎公民館、東箱崎公民館と連携して、小学生を対象とした「貿易ゲーム」を行っています。「貿易ゲーム」は先進国チームと途上国チームに分かれて、モノの売り買い、交渉を通じて、世界の貿易の不公平さ、経済格差を学ぶゲームです。今年で3年目になりますが、毎年大学生と小学生でグループを作って、ゲームを通じて国際社会の成り立ちを学んでいくという講座を行っています。

③そして、三つ目がこの「世界一大きな授業」です。趣旨としては②と似ていますが、世界の教育問題を大学生と地域の皆さんがゲームやディスカッションをしながら学んでいく、問題を発見していくというのがそのねらいです。

①~③の活動は多かれ少なかれ、ワークショップという形態をとっています。つまり、参加者が意見を出し合って、その中で問題を発見し、解決方法を探っていくということです。さらにそこにゲームやディスカッション、プレゼンテーションという要素も盛り込んでいます。それはメタな視点で言えば、こうしたワークショップを通じて、国際政治学が対象としている国際社会のありかたやその多様性を理解するための、知るための、教育的ツールを作りだしたいということになります。このことは、細かい問題意識は異なっていても、方法論としては開発教育や国際理解教育とも共有可能なものだとも思っています。具体的には、ワークショップを通じて、授業実践やそれに基づいた授業研究、教材研究を行い、そこでの研究成果や教材開発を活かしながら国際政治学の知見を社会に還元していくということになるのだと思います。道はなかなかに険しいですが、いずれは科研クラスの研究費を狙いたいと思っています。

「世界一大きな授業」について言えば、去年と今年で2年間行って、いろいろと課題も見えてきたので、これまでの実践やデータを用いて、論文を書きたいと思っています。参加者としての地域の人々とファシリテーターとしての大学生がどのように問題を発見していくのか、問題発見のプロセスとして考えた場合にワークショップにはどのような利点と機能があるのかということを掘り下げて考えていくということになると思います。おそらく、こうした研究のメリットは研究→教育→社会連携というプロセスが互いに連動していることではないかと思います。(通常の政治学、国際政治学の研究とは異なって)「実践」が対象となりますので、現場からのフィードバックを得て、それを研究、教育を改善させていく事が可能です。その意味で私にとってワークショップは、社会連携活動で有ると同時に、研究でもあり教育でもあると言えます。社会連携活動を積極的に始めてみてこの2~3年は試行錯誤の連続でしたが、今後もワークショップの実践を研究や教育、社会連携活動に活かしていきたいと思っています。

西日本新聞5月26日

西日本新聞5月26日

朝日新聞5月25日

朝日新聞5月25日


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