大学院法学研究院 准教授
大賀 哲

査読

2016.05.18

査読
 

少し前になるが、とある国際ジャーナルの査読で自分が「要修正」でだした論文が、もう一人の査読者が一発「不採択」にしたので流れた。どういうことかというと、学術論文は通常「学術誌」に投稿されるわけだが、その論文を評価するプロセス(査読と呼ばれるもの)があり社会科学系の場合は2~3名程度の査読者(普通はその分野の専門家)がその論文を読んで採否を決定する。ジャーナルにもよるけれども、査読者は不採択・要修正・採択(条件付き・軽微な修正)・採択(無条件・修正不要)などのジャッジをする。

通常は一人でも不採択を出すとそのまま不採択。今回の論文は、自分は「要修正」(今のままじゃダメだけど、書き直したら再査読するよ)という回答をしたのだが、もう一人が不採択にしたので、そのまま不採択。こういうことはよくある。しかし、なかなか釈然とない思いもある。いや、制度上これは仕方ないのだが…。

究極的にはそのジャーナルの位置づけを査読者がどう考えるかという問題に帰結する(ちなみにそのジャーナルは、まあ超一流ではないけれども、中堅どころのまあま良い雑誌)。結局は、この論文はこの雑誌に相応しい/相応しくないみたいなかたちで査読者が暗黙のうちに持っている基準(そして、それは表立って論じられることはない)に左右されることも少なくない。他方で、査読は○×判定ではなくて、どうすれば原稿がより良くなるかを提案するものと思っているので、明確に間違いがなければ通して良いと私は思っている(それもあって、私はたぶん要修正の範囲がたぶん人より広い)。

これもまあ明確な線引きがあるわけではないので難しいのだが…「ある程度素晴らしい論文でなければ採択しない」という方針の人と「明確な間違いがなければ採択する」という方針の人がいるので、この辺の認識の差は埋めがたいようにも思う。ただまあ、さっきも言ったようにその雑誌は中堅どころの雑誌で院生も多く投稿してくる媒体なので、もう少し「要修正」の幅が広くても良いのでは…と思った次第。

 


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