大学院法学研究院 准教授
大賀 哲

研究不正

2016.05.19

研究不正
 

これも少し前のニュース。筑波大学で研究不正が見つかった。内容見ると、それはまあ発覚するよね、というような杜撰な手口だった…。まあ、いろいろと不自然に感じるところもあった。

簡単に言うと、剽窃。他人の著作物をそのまま自分が書いたかのように引き写した(それもかなり盛大に!)という行為。当該の方、業績的にこれで准教授なれるの?という感じなのだが、とりあえず任期付き教員の方で、安定したポストを得るために業績が必要というのは話としては理解できる。だからまあ、業績に行き詰った方が追い詰められて剽窃したということなのかもしれない。

ただ不自然に感じることもあって、当該の論文はチャールズ・テイラー(Charles Taylor)に関してのものなのだが、その方の過去の論文を見ると、テイラー専門というよりはわりと頻繁に専門分野を変えている(しかも同時並行という感じでもない)。つまり任期付きでインテンシブな業績が必要なら何故そんな非効率なことするのか、というのがひとつ(テーマを絞ってインテンシブな研究をした方が合理的)。

さらに調査報告書を読むと、剽窃は2報。1報は学会誌、もう1報は紀要。読んだ感想としては、まさにそっくりそのまま盛大に引き写すといういかにも発覚しやすいしパターンだったのだけれども、普通に引用した上で自分の考察(コメント)入れれば良かったと思うので(つまり、丸写しするのではなく、引用した上で自分で論評すれば良い。まともな研究者は皆そうしている)、何故わざわざ剽窃、しかも丸写しという危なっかしい選択を選んだのだろうかという疑問。とくに学会誌なんて、それこそ専門家がうようよいるわけで発覚するリスクは相当高い。つまりメリットはあるかもしれないがリスクは相当高い(たぶん受験でカンニングするよりもリスクは高い気がする…)。

逆に大学の部局単位で出している紀要論文というのは、学会誌に比べれば発覚のリスクは低いのかもしれない。ただその代わり、たいして評価されるわけでもない。ざっくり言えば、「不正をしてまで素晴らしい論文に仕上げなければならない」という感じでもない。その意味では発覚のリスクは低いが、業績上の評価も低い。

全体として、なんだか素人臭さが漂う案件と言ったほうが良いのかもしれない。筑波の社会科学系の教員のこの手の剽窃案件は過去にも2、3件あったように記憶してるけど、少し思うのは任期付きでポストで回してるから人の入れ替わりが激しくて、過去の教訓とか危機意識とか、再発防止策みたいなものがノウハウとして共有されていかない…というのはあるのかな、とふと思った。

 


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