2017.08.17
さて今度は京都大学。産学連携のためのコンサルティングとシンクタンク機能を持った新会社を設立するという記事。
資金と人材集まれ!京大が「指定国立大」の強み生かし新会社
http://newswitch.jp/p/10028
こちらも賛否両論が結構激しい。結局は、やってみないとよくわからないということなのかもしれないが…。
面倒なのでそのまま引用すると、「新会社は学内で手がけてきた技術相談業務を切り出して設立する。コンサルティングとシンクタンクの機能を持ち、文系学部の教員も参加する。外部からの各種相談から共同研究につなげ、企業からの資金調達を増やす重要な窓口と位置付ける」ということだそうで。
実は自分が関わっていたものも含めてこの手の話はここ最近よく耳にするし、内容的にはとくに目新しくもない。要するに企業がお金を出して、大学と共同研究を行い、更には研究成果を活用してくれる企業との連携を強化する(出資も可能)という話で、大学は研究費が得られ、企業は商売になる。
公的研究費がバンバン削減される中で産学連携(要は企業からのお金)に期待する向きはというのはとくに新しくもないし、最近とくにその傾向が強まってきたこともあって、類似のプロジェクトや構想はある程度以上の規模の大学であればどこでも考えていることだろうと思う。
で、今回新しいのは「研究成果活用の企業への出資」ができるようになるという点と、産学連携の会社を設立するので、(学内で専門スタッフを任期付きで雇用するのとは異なり)「産業界から大型資金を引き出せる人材を高給で任期なしに採用できる」という点。本当にそんなに上手くいくのか?という懸念もあるが、とりあえず従来のように組織的な対応が十分整備されているとは言い難く、結局は担当教員の人脈に強く依存する…というかたちに比べれば大きな一歩と言えるのではないかと思う(上手くいくかどうかは未知数だが…)。
一応、「文系学部の教員も参加する」ということの意味を言えば、たとえば過疎地域の村に自動運転の公共バスを導入しましょうという場合に、技術的な課題だけでなくて、法制度はどうする?行政との連携は?地域コミュニティへの浸透は?トラブル起きたらどうするの?という社会的な問題の対処を考える必要がある。そこで、たいていはテクノロジーを担当する研究者だけでなく、社会制度や人間生活にも詳しい文系の人間を入れときましょうという話になる(過去に出た産学連携の会議もだいたいそういう理由で文系の人間が徴集されたりもしたので…)。ただ、現状ではそもそも文系と理系の知見を融合するということ自体がとてもとても難しいし、コミュニケーション・コストもかかるので、数合わせ(名前だけ文系の研究者も入れておく)というケースが多い気がする。少しずつでも、そうした現状が改善されると良いと思うが…。