大学院法学研究院 准教授
大賀 哲

東大、若手研究者300人「任期なし教員」に転換

2017.08.16

東大、若手研究者300人「任期なし教員」に転換

東大が外部資金獲得による間接経費などを使って任期付きの若手研究者を「任期なし教員」に転換するという記事。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00439401

TwitterやNewsPicksなどを見た限りでは賛否両論がそれなりにある。肯定論は「任期なし教員」を増やすこと自体を評価する議論や他大学への波及効果を期待した意見が多く、慎重論は財源が間接経費である(つまり外部資金の獲得状況に左右されることになる)点を懸念している。

個人的には短期的な見通しとしては評価できるのではないかと思っている。中長期的に運営費交付金の増額は要望するにせよ(それしかないと思うが…)、すぐに状況が好転するとは考え難い。その間も日々の研究は継続しなければならず、研究のアウトプットを増やしていくためには、①公的研究費、②研究者数、③研究時間などのリソースを維持・増強していかなければならない。「任期あり教員」を「任期なし教員」に転換することで、安定的・継続的に研究を行う環境を整えることもできるし(つまり安定的な環境で研究できる研究者の数が増える)、研究者数が増えれば非研究的な業務負担も分担することができるので、結果として1人当たりの研究時間は増えるという見通しも可能だ。

そこで問題となるのが財源なのだが、運営費交付金に期待できないので、外部資金の間接経費を使ってというのが今回の記事の内容。現状、①の公的研究費を増やすことはかなり難しいが、②研究者数や③研究時間を増やすこと自体は間接経費を使えばそれほど難しくはない(この点については以前に書いた間接経費の要望書を参照)。上述のように研究者数が増えれば、研究者1人当たりの研究時間が増える可能性もある。

今回の東大の取り組みは②を安定化させ、②のなかでの任期なしの割合を増やすためのものなので、そういう意味では評価できる。もちろん、短期的には間接経費で任期なし教員を増やすにしても、中長期的には運営費交付金など安定的な財源の確保が欠かせないので、結局この取り組みだけでどうこうということではなく、長期的な戦略が必要なのだが、着想、アイデアとしては評価して良いと思う。
 


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