2015.04.6
毎年この時期は科研費(http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/)の採択結果の発表があります。1年に1度かなり緊張する時期ですが、今年は挑戦的萌芽研究「東アジア人権ガバナンスの競合と複合化―「アジア市民社会」と「アジア的価値」(平成27~29年度)に無事採択されました。
これはどんな研究なのかというと、2年前に出版した『東アジアにおける国家と市民社会(柏書房、2013年)』の問題意識を発展させ、人権ガバナンスに焦点を合わせグローバル規範と地域規範との相互連関を考察することが目的です。
どういうことかというと、東アジアを見ていくと、一方で市民社会やNGO等の規範形成活動を通じて人権や民主化、法の支配といった「アジア市民社会」規範が形成されていますが、他方では国家主権を擁護し、欧米の人権論を相対化する「アジア的価値」という規範もまた健在で、前者は人権をグローバル規範として捉え、後者は人権を地域ごとに異なった地域規範として捉えています。たとえばASEANの場合、ASEAN憲章が作られ、アセアン政府間人権委員会が発足しましたが、欧米のような人権保障の体制がすぐにできるわけではありません。人権や民主主義といった市民社会的な規範と「アジア的価値」のような国家的な規範との対立、齟齬はしばらく続いていくでしょう。むしろ東アジアの人権ガバナンスはこの二つの規範-「アジア市民社会」と「アジア的価値」-の競合と協働の中から漸進的に形成されていると言えます。今回の科研費研究では、そうした東アジアの人権ガバナンスに着眼し、人権のようなグローバルな規範と「アジア的価値」のような地域規範との競合と協働を検証し、両者の相互連関-互いに互いがどの程度影響し合っているのか―を明らかにしたいと思っています。どうぞ宜しくお願いいたします!